外部刺激応答性光機能を兼ね備えた「熱活性化遅延蛍光(TADF)材料」の開発

武田 洋平
(大阪大学 大学院工学研究科 准教授)

2017年1月13日金曜日

論文掲載

皆様

 こんにちわ。研究成果が論文に掲載されましたので、簡単にご報告を。


 「こする」「加熱する」、などの外部刺激が加わった際に発光材料の発光色が変化する現象を「発光(性)メカノクロミズム(mechanochromic luminescence: MCL)」と呼びます(厳密には、機械的刺激に応答する場合に限って”メカノ”の接頭語をつけても良いはずですが、このような発光色変化は他の外的要因によっても観察されることから、最近では広義として、機械的刺激以外の外部刺激に応答する場合も含められることが多いようです)。MCL特性を示す材料は、圧力や温度に応じて発光色が変化することから、材料が感じている状態変化を示す化学センサーやメモリ材料としての応用が将来的には期待できます。このような材料を開発する、原理を解明するという研究は世界中で活発に研究されています。日本はこの分野をリードされている先生方が多く、当該分野においては研究が進んでいるように思います。


 さて、今回我々が論文報告した内容というのは、以前のブログでも紹介させていただきました熱活性化遅延蛍光(TADF)材料に、複数色変化するMCL特性を付与できました、というものです。

 詳しくは、論文 Chemical Science, 2017, doi: 10.1039/C6SC04863C
(オープンアクセスですので、どなたでも無料でご覧になれます)、または大阪大学プレスリリースをご参照いただければ幸いです(なるべく平易な言葉で解説したつもりですが、理解困難でしたら直接お問い合わせいただければ、と存じます)。
 ポイントとしては、コンフォメーションと呼ばれる分子の”揺らぎ”に由来する構造的変化を発光色変幻へ翻訳できた、ということになるでしょうか。また、TADF分子としての強みを活かして、有機EL発光材料としての性能も以前報告したものから損なわれていない(有機ELデバイスの外部量子効率〜17%)ことも特筆すべき点です。
 
 さて、よく”TADFとMCLを組み合わせて何が面白いの?”と聞かれますが、今の所、即答できる回答はありません。まさに我々にとっても未知の領域です、が、当然期待できることはたくさんあります。例えば、TADF特性は温度や酸素濃度に敏感ですし、MCLは圧力や温度や応答します。つまり、様々な状況(建築物や乗り物など)において使用されている材料そのもが感じる状態変化(圧力変化・酸素濃度・温度変化)を同時に可視化できるセンサーや表示デバイスへの展開が考えられます。この辺りは、今後探っていけたらな、と思っています。

 この成果は、国際科学技術財団様にご採用いただきました「外部刺激応答光機能を兼ね揃えた熱活性化遅延蛍光材料」の実現に向けて光が見えてきた、と言っても良いのではないでしょうか。これもひとえに国際科学技術財団様から研究助成のご支援があったからこそです。この場を借りて御礼申し上げます。



2017年1月4日水曜日

Krutynサマースクールで講師します。

こんにちわ。

本日は、少し早いですが講演関係の宣伝です。

この夏、ポーランドで開催されるサマースクールで講師します。
以下、簡単な情報と1st circular(パンフレットみたいなもの)になります。

会期:2017年5月21-27日
場所:ポーランド、Krutyn
対象:博士課程学生やポスドクなどの若手研究者
テーマ:State of the Art Organic-only TADF OLEDs. From Theory to Applications
(有機系の熱活性遅延蛍光材料についてのサマースクールです)

武田は有機合成的な観点(合成法や逆合成など)からみたTADF材料開発について
講師を務めます。

ご興味を持たれた方、参加登録などの詳細は、以下をご参照ください。http://tadfoled.ikss.eu/index.php






2017年1月2日月曜日

明けましておめでとうございます。

皆様

改めまして、新年明けましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。

 後期に入ってから年末にかけて学会シーズンと忘年会などでドタバタしておりましたので、更新が滞っておりましたが、ちょうど正月休みで少し時間がありますので、昨年の総括や本年の目標などをつらつらと綴ってみたいと思います。

 まずは、昨年後半の出来事から。

 前回のブログhttp://blog2016takeda.japanprize.jp/2016/09/blog-post.html)にも綴らせていただきましたが、昨年9月には「やさしい科学セミナー」を実施しました。大学の他の仕事と並行しての企画・計画・開催でしたので、正直、「これ、本当にできるのか?!」という気持ちも無いことは無かったですが、学生TAさんの頑張りと、国際科学技術財団様にご尽力いただいたおかげで、参加していただいた高校生の皆さんに科学の面白さが伝わったセミナーを開催できました(と信じています)。しんどかったですが、振り返ってみると、本セミナーでの経験は大学の教育にも還元できるな、と感じることが多かったので、やはりやってよかったです

 さて、その他は学会シーズンでしたが、多くのことにトライできました。初めての高分子討論会への参加、リトアニアで開催された国際会議での招待講演、EUの研究プロジェクトのアドバイザーとしての参加、参画させていただいている新学術領域関連のシンポジウムでの発表、母校での講演などなど、盛りだくさんかつ内容が濃かったです。学会でのメインのお仕事は研究発表・討論と世間では考えられているかとは思いますが、実は、人的交流も同じくらい大きな役割を占めているのです。論文上でしか名前を知らない研究者と直に会い、研究哲学や研究の裏話を聞いて今後の研究の進め方に参考にしたり、異分野の研究者と意気投合することで共同研究にまで発展することも多々あります。研究者同士のface-to-faceの対話が如何に大切か、を身にしみて知っているからこそ、興味を持った学会・討論会にはできるだけ参加するようにしていました。

 しかし、今年は少し様子が違うようです。今までは自分で興味を持って参加を申し込むことの方が多かったのですが、今年はついに招待講演で呼んでいただける数の方が、自分で申し込む予定数よりも多くなりました!こういう時こそ、自分のことを宣伝する良いチャンスかと思いますので、今年は「攻め」のスタイルで研究に臨んでいこうと思っています。実は、今年は年男でもあるので、まさに人生の転換期になるよう、一日一日を大事にして過ごそう、と思う次第です。

 長々と駄文を書き連ねてしまいましたが、最後まで読んでいただき、ありがとうございます。それでは引き続き本年もお付き合いよろしくお願いいたします。